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■ラーメンの味はスープで決まる。
 開店にあたり、当店は独自にスープの研究を重ねてきました。
 そして“ダシ”の慣習を破りました。当時、どの店も“ダシ”は豚ガラと決まっていましたが、敢えて煮干しを使うことにしたのです。

 煮干しはふつう、みそ汁のダシに使われるもので、日本人の味覚にもっとも合うと判断したからです。
 これに昆布、豚骨、背脂、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもなどを入れて、スープをとることにしました。
大きな転機を迎えたのは
 出前をやめて、味づくりに懸命に取り組み出した昭和36年のことでした。
 スープの味の決め手となる煮干しについて、1つの情報を得ることができたのです。

 煮干しといえば、背黒イワシ(片口イワシ)しかないと思っていましたが、ある人から、真イワシという煮干しの存在を知らされたのです。
 試してみると、なるほど、臭みも無く、味の面でも背黒イワシより優れていて、さっぱりしたダシがとれる。
 ただちに真イワシに切り替えました。
スープの味が一段と向上したことは言うまでもありません。

 それから10年ほどは東京の問屋から仕入れていましたが、色や大きさ、形にバラつきのあるのが気に入らないので、思い切って業者を替えることにしました。
■スープの味の決め手となる真イワシ
 新しい業者が持ってきた真イワシは茨城県波崎産で、色つやがよく形もまるで違う。かじってみると、苦みも少ない。

 「同じ真イワシでも、こうも違うものか」と驚いた私は翌日店を休んで産地に出向き製造業者に会いました。そこではじめて知りました。

 同じ真イワシでも産地や製造方法によって、大きな差があることを。

 そこで47年には、ついに産地買い付けに踏み切りました。
 夏休みや冬休みを利用して、千葉、茨城、さらに山口、長崎まで足を運び、体長7〜8cmの良質の真イワシを仕入れることにしたのです。
■煮干へのこだわり
 海岸線に沿って走る車窓から、イワシが干してあるポイントを見つけると、地図に書き込んでいき、鳥取に着くと、タクシーをつかまえ、今来た道を逆進し、地図に書き込んだポイントを一軒一軒しらみつぶしに当たりました。
 訪ね歩くこと50件余り、3日目にして山口県江崎港で、ようやくこれぞという煮干しに巡り合うことができました。

 しかしこれに満足することなく、煮干しのサイズ、干し方、堅さまで細かな注文をつけたのはいうまでもありません。

 現在、大勝軒では長崎産、山口産、茨城産の3種類をブレンドして使っています。
 関東ものは脂が多く、関西以西のものはサラッとしている。両方をミックスすると、ちょうどよい味になるのです。その年の産地ごとの出来、不出来、クセの具合によって、ブレンドの仕方までも変えています。
■当店がスープ以上に力を入れているのがタレ。
 ご存知のように、ラーメンのスープは、しょうゆダレにスープを注いで作ります。スープがおいしくても、タレがよくなければいいスープにはなりません。スープとタレは車の両輪のようなものですが、タレにこだわる店は案外少ないのです。

 当店も創業時はスープ作りに熱中するあまり、タレにまでは気が回らず、生醤油をそのまま使っていました。どの店でもそんなものだろうと思っていたからです。それが思い込みだと知ったのは創業3年目のことでした。

 ある店にラーメンを食べに行って初めてそれに気付きました。スープの色が淡いのです。これがタレの研究に取り組むキッカケになりました。
キッカケはもう1つありました。
 ラーメンの出る数が増えるとスープが薄くなるという問題です。
 スープが少なくなると水を足していくわけだから、当然のです。タレにこくをつければスープの薄くなった分がカバーできる、とも考えたわけです。

 これから先はタレの研究に没頭し、醤油をブレンドしてこれに何種類かの材料を加え、コトコト煮詰めるという方法をあみだすまでに数か月かかりました。加える材料も一つ一つ増やしていき、現在はキッコーマン、ヒゲタ、岐阜の生引の3大銘柄をブレンド、これに9種類の材料(秘)を加えて、独特の味を作り出している。
■大勝軒はタレもブレンド
 常時作りためておき、長期貯蔵したもの、中期貯蔵したもの、新しいものをミックスして使う。数年前までは、3日に1度の割合で作り、常時半年分をストックしていたが、今は毎日作っています。

 実は、タレの作り方は、いっさい秘密。誰にも教えていないのです。
 タレは大勝軒のラーメンを決定づける秘中の秘。おいそれとは教えられません。店主草村が毎日7時間かけて丁寧に作っています。
■スープが冷めない!最後のひとすすりまで熱々のヒミツ
 麺の量が超がつくほど多いのに、食べ残す人はほとんどいません。
 腹具合を調整してやってくださるのでしょうが、年配者でもきれいに平らげて下さる方が多いです。
 もちろん、おいしいからなのですが、理由はそれだけではありません。

 当店のラーメンはスープが冷めません。
 最後のひとすすりまで熱々のまま食べられるのです。

 量を多くすることは簡単なようで、実に難しいのです。それは単に量を倍にしたのでは、途中で飽きてしまうし、スープも冷めてしまうからです。

 「まず飽きさせないようにするにはどうすればよいか」。

 当然の話ですが、おいしければいいのです。
 そのために開店以来200回にも及ぶ「味変え」を続けてきました。

 では、「スープが冷めないようにするにはどうすればよいか」。

 手探りの研究の末にやっと出た答えは、スープに脂分を補うことでした。脂分を補えば、スープにほどよく油膜が張って、熱が逃げにくいと考えたわけです。
 脂分とはすなわちラードのこと。しかし、ラードといってもピンからキリまであります。
 香りや味、そして健康上の問題も考慮して選んだのが、“世界一の味”と定評のあるオランダ産カメリア印です。